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プロジェクターとスクリーンで自宅で映画を楽しんでいます。

千利休 本覺坊遺文

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1989年 西友(配給:東宝

監督:熊井啓

出演:奥田瑛二三船敏郎萬屋錦之介加藤剛芦田伸介上條恒彦

鑑賞:BS放送録画

奥田瑛二が若き利休の半生を演じるのかと思いきや、千利休の敬虔な弟子の本覺坊の回想による千利休をはじめとする豊臣秀吉政権下での茶人の生き様を描いた物語でした。今ではベテランの奥田瑛二もまだ若々しく、また大スターの三船敏郎萬屋錦之介が貫禄・気迫共に抜群でした。茶人の利休が太閤秀吉から切腹を命じられたことは有名な史実ですが、その理由については諸説あるようです。この映画はその辺の事情を、戦国時代にあって日常的に死と向かい合って生きていた武士たちと、茶人の哲学とを独特に関連づけて出来上がっています。三船敏郎が利休というので、「三船って、やはりサムライでしょう」と思ったのですが、これが案外合っているんですね。戦国時代に武士たちと死の哲学を共有して生きているストイックな哲人の役どころですから。他の出演者も多彩。三船以外では、山上宗二役の上條恒彦がよかったです。存在感があるし、あえて太閤にケンカをふっかける役どころがよく似合っていました。男優だけの映画ですが、合戦シーンもあるものの、あくまでメインは茶道を介して人間の生き方を思索するところにあります。予備知識なしで見たのですが、邦画には珍しい哲学性を備えた作品であることに、ちょっと意表を突かれました。利休の切腹理由ははっきりとはしませんが歴史の勉強にはためになった1本でした。それと当時は茶人とは男だけの世界だったということも今とは大きく違っている点にも驚きました。流石熊井監督といったところでしょうか。