
1983年 松竹
原作:松本清張
40年前の作品ですが、若かりし頃の田中裕子はドキッとするような妖艶さがありますね。この作品は時間軸の移動がありますので少し難解なところもありますが、時間軸として移動するのは渡瀬恒彦だけですので、若かりし頃のエネルギッシュな渡瀬と年老いた渡瀬を楽しむことができます。こうして見てみると鬼籍に入った俳優さんがたくさん出られていますので懐かしく見ることもできました。作品は、少年の視点、刑事の視点、そして現代になっての視点という3つの視点から構成されており、複雑な時間軸の移動が作品に独特の緊張感を与えているような感じでした。さらに、父でない男性と関係を持つ主人公の母親(吉行和子)を丁寧に描き出すことで、少年の思春期の心のもつれを浮かび上がらせてそれが伏線となり、多感で傷つきやすい少年が旅先で出会う美しい女性田中裕子に抱く一瞬の思いが、母を浮かび上がる構造になっています。原作は松本清張、読んでみたくなる隠れた名作ではないでしょうか。
