2016年 アスミックエース
監督、原作:西川美和
出演:本木雅弘, 竹原ピストル, 藤田健心, 白鳥玉季, 堀内敬子
【あらすじ】
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、突然の事故で妻を失ってしまう。しかし夫婦に愛情はなく、幸夫は悲しむことができずにいた。そんなある日、彼は同じ事故で亡くなった妻の親友の遺族と出会う。
西川美和監督作品はこれで4本目を見ることになります。最近読売新聞の新作のインタビューも掲載されていて、目の離せない女性の監督さんですね。濡れ場シーンなんかを見ていますと女性特有の撮り方だなぁって感心するところがあります。「ゆれる」の西川美和監督による、パートナー喪失からの心の再生の物語です。今回は、ミステリー的要素は無く、純粋にパートナーの死に主人公が向き合い、他の一家との交流を通して自己回復・成長を成し遂げる過程を描いていきます。本木雅弘演じる主人公は、突然の事故で妻が凄惨な死を遂げたまさにそのとき、自宅で愛人との情事に耽っていた。世間的には悲劇の男として振る舞うものの、実のところ“悲しみ”を感じられない辛さ、未熟すぎて自身への言い訳すらできないことへの苛立ち。胸の内で入り乱れる憔悴、諦観、激昂などなど。
演出意図の見えやすい『ディア・ドクター』や『ゆれる』よりも、“正解の見えない”こちらのほうが西川監督の本領、描きたかった世界なのかもしれませんね。これまで観た作品とは全く違った作り方のように思いました。 新作が楽しみです。